気持ち悪い?吐き気や悪心を示す犬

気持ち悪い?吐き気がありそうなワンコが来院

実際に嘔吐まではいかないまでも、『なんか吐きたそうにしている』わんこが来院されました。
あくまでも飼い主さんの感覚的なものとなります。
*今回は、診察において、同様の印象を受けましたが、飼い主さんの感覚・印象と実際は異なる場合もありますので、必ずしもそれが正しいわけではありません。

様子としては、元気がない、くちゃくちゃとして、生唾を飲み込むような仕草がある。ふらつくなどが主訴でした。

したがって、その確認からスタートするのが基本です。
つまり、「本当に気持ち悪そうにしているのかな?」「悪心・吐き気」があるのかな?というところから始まります。

悪心とは

悪心(nausea)とは、心窩部や前胸部、咽頭にかけて生じる“吐きたい”という不快な感覚のことです。
わかりやすくいうと、「吐き気」です。
不快な感覚というのも、「気持ち悪い」というとなんとなくわかるかと思います。

自覚と他覚

ここで、重要なことがあります。
以前に書いた「どこかが痛い?」という記事でも述べましたが、動物は言葉をしゃべれません。
ということで、自分で発信するすることが出来ませんので、ボディランゲージや表情など、様々な動物の様子から推測することとなります。

自覚とは、自分で感じて、認識していることをいいます。
めまいや吐き気がしたり、関節に違和感がある、痛いなどがそれに該当します。
逆に、他人から見たら、それとわからないことがほとんどです。
一般的に主観データと言われ、「症状」は患者が自覚する不調として表現されるものをいいます

他覚とは、他人が認識できることをいいます。
獣医学的に客観的に捉えることができるものをさします。
一般的に客観データと言われ、「徴候」は医療スタッフが客観的に観測できる不調のことをいいます。
具体的には、発熱、高血圧などがこれにあたります。
ほとんどのものが、数値で表現することが出来ます。

主観データを客観データに近づける

自覚症状が本人が認識してはいるけど、他者が認識できないことがわかりました。
しかし、それをなんとかして可視化したり、データ化することである程度表現することが大切です。

どこかが痛い?」という記事で、ペインスケールというものを利用しましたが、痛いときによく示す行動や表現に着目して、それをスコア化(客観的なデータに近づける)することが大切です。

特に、本人からの主張はウソをつけますが、発汗や発熱、腫脹、反射や麻痺などウソをつくのが困難なものはチェック項目として信用度が増します。
逆を言うと、本人の主張をそのまま鵜呑みにするのは危険ということになります。

いくつかの徴候から症状を推測する

反対のプロセスを考えてみましょう。
実際には、これが非常に大切となります。
 *犬は自覚した情報を直接しゃべれませんので、こちらが逆に気付く必要があります。

犬の慢性痛では、やはり 動物のいたみ研究会 さんから、慢性疼痛に関するポイントとチェックリスト というのが出ています。
こういった、チェックリストをもとに、痛みがあるかどうかを推測していくことになります。

悪心をしている動物

悪心を起している動物は様々な他の徴候を出すことが多いです。
それにいち早く気付き、「悪心がある(気持ち悪い)のかな?」と推測することが大切です。
上記では痛みで例えとして説明しましたが、実際に悪心・吐き気が見られた場合を考えていきましょう!

主な身体症状

唾液が増える(くちゃくちゃとして、唾を飲み込むなど含む)、ふらつき、心拍数増加、息切れ、運動不耐、ぐったり、体温低下(原因によっては上昇)、血圧低下(場合によっては上昇)、呼吸数増加、努力性呼吸、消化器系の不調(便秘や下痢)、震え、触ると怒る、攻撃性の発現・増強、隠れる、じっとする、いつもと違う姿勢(背中を丸める、お尻をあげるなど)、お腹を触ると腹筋に力が入る(腹部圧痛・筋性防御)、水を飲もうとする(がぶがぶと一気に大量に飲もうとすることが多い)、異食性(草を食べるなど、いつもと違った食性を示す)などがあります。

嘔吐中枢の近傍には呼吸中枢、血管運動中枢、消化管運動中枢、唾液分必中枢、前庭神経核などがあるため、関連した症状・徴候が発現することになります。
自律神経、迷走神経などや大脳皮質、化学受容器引き金帯なども関連するため、やや複雑です。

例えば、嘔吐中枢の近くにある唾液分泌中枢が刺激されるため、吐き気・悪心があるときは唾液の分泌がおきることが多いです。
唾液は胃酸などの刺激物を中和、口や喉の粘膜を保護したりする役割があります。

これらは、「なんで悪心・吐き気が起きるのか?」の原因特定にも役立つことがあるため、症状が多岐にわたる厄介さはあるものの非常に重要です。

主な精神的症状

不安感、イライラ、抑うつ気分、集中力や思考力の低下、睡眠障害(不眠など)、攻撃性の増大などがあります。

いつもと違う様子に、「なんとなく」気付くことが多いのではないでしょうか

悪心・吐き気が見られたら

その様子を動画に撮影して、どんな状態であったかを記録しましょう。
時間(いつ・どの頻度で・どのくらい長く、など)や様子を記録することで診察に役立ちます。
 *主観を客観データに近づけることは非常に大切です。

悪心・吐き気が見られたということは、この後、嘔吐が起きる可能性が高いです。
なるべく早めの受診を心がけましょう。
特に、1歳齢未満の幼弱動物、基礎疾患を持っている病弱な動物、高齢動物はすぐの受診をお勧めします。

その際は、ご家族全員にヒアリングを実施し、考えられる心当たりをリストアップしておくと良いと思います。

検査

さて、悪心・吐き気があることがやはり疑われたら、検査となります。

悪心・嘔吐(今回は嘔吐は見られませんでしたが)が疑われる場合は、基本バイタル測定の他、まずは血液検査やレントゲン検査を実施します。
それをスクリーニング検査として実施し、異常があった場合はさらに超音波検査、バリウムなどを用いた造影剤による検査、場合によってはCT、MRI、内視鏡や試験開腹までも視野に入れておきます。
 *CT、MRI、試験開腹などは最終手段であり、通常はそこまでは滅多にいきませんし、夜間救急では実施しないことが通常です。

結果として、
・バイタル(心拍数、体温、呼吸数、血圧、酸素飽和度など)は安定
・意識状態OK
・神経症状無し
・外傷・出血なし
・疼痛反応なし
・血液検査で異常値無し
・レントゲン上では明らかな腹膜炎・異物・消化管閉塞・腫瘍などは見当たらず
  *検査の精度上の限界はあるため、「明らかな」という表現になります。

結論:原因不明ではあるが、悪心・吐き気があるのは間違いなさそう
   必要であれば要精密検査ではあるが、緊急性は低いと思われる

治療

暫定的に、対症療法を実施としました。
吐き気止め、胃酸分泌抑制剤を投与しました。
循環状態を良くするための補液や、血管確保(ルート確保)も検討しましたが、今回は見送りました。

最後に!!!

悪心・嘔吐が見られたら、「食事・飲水」は なし にしましょう。
 *受診まで半日以上空くようであれば、動物病院にご相談しましょう。

夜間にペットの体調が悪くなったら

動物病院の受診をお勧めします

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執筆 K-VET