タイトルの通りですが、何となく元気がない=不定愁訴を訴える犬が来院されました。
「元気がない」というのは立派な異常なのですが、「飼い主さんの感覚的なもの」となります。
不定愁訴とは
不定愁訴とは、検査をしても原因が特定できない、漠然とした体調不良を指す医療用語となります。
人間だと、「体が重い」「なんとくだるい」「よく眠れない」などが、これにあたります。
結果として、「検査をしても何も異常が出なかった」という事実をもって不定愁訴となるのですが、診療開始前の検査をまだ実施していない状態でも、暫定的に「不定愁訴」と言ってしまうことはあります。
不定愁訴は、本人が強く感じる自覚症状(主観的)はあっても、他覚的な所見がほぼないというのが特徴です。
症状は一定ではなく、その時によって程度も変化することが多いため、周囲からの理解を得にくいこともあります。
なんなら、本人ですら、体調不良を気のせいだと思ってしまいます。
つまり、獣医師が見て、「パッと見、なんの症状もない」というのが特徴なのです。
不定愁訴 = 症状がない ≠ 問題ない という事実
ここで大切なのは、症状がないということは問題ないということと必ずしも同一ではありません。
これは、なんとなくわかるかと思います。
別に自覚症状がなくとも、健康診断で病気が見つかることはよくあること。
しかし、不定愁訴は、自覚症状があるのに、検査をしても「何も異常が検出されなかった」というものです。
検査で異常なし = 健康 ではないのです!!
それは、「検査した項目においては異常が見つからなかった」というだけであり、「検査していない項目で異常が隠れている」可能性があるのです。
これは、手が痛いのに、足を検査して異常がないからといって、全身の異常がないとは言えないのと同じです。
ペットの自覚症状
犬や猫などのペットは、自分で症状を訴えることができません。
なので、正確には、「自覚症状」というのは間違いで、飼主さんがそう感じているにすぎないのですが、便宜的に、「ペットの代弁者」として、「自覚症状」とみなし、不定愁訴という表現は使います。
もっとも身近な観察者の飼主さんのおっしゃることはたいていの場合、正しいです。
我々、獣医療スタッフが問診を重要視するのもこれがあります。
各種検査を実施
さて、前置きが長くなりましたが、問診からスタートして、視診・触診・聴診と一通りの検査を実施します。
一般身体検査
まずは、見てわかる触ってわかる簡易な身体検査・バイタルチェック
食欲あり。
意識レベルは正常(清明)
呼吸音正常、呼吸安定。
体温は平熱。
心雑音なし。
腸蠕動音聴取可能。
関節可動域なし。
歩様正常。
外傷・出血なし。
明らかな神経症状なし。
血圧正常。
・・・・・・・・
問診では、具体的な環境変化や思い当たる出来事などはないとのこと。
ただ、あきらかにいつもと違って元気がないという・・・
(診察中は、しっぽ振って元気そうに歩いておりました。)
血液検査・レントゲン検査
つぎに、血液検査やレントゲンを実施します。
実施する目的は、スクリーニング検査としての全体検査です。
明らかにおかしい部分がある場合は、それを疑って検査を実施します。
しかし、今回のような「なんとなく元気がない」ということで、一通りのチェックの後、ヒントが全くない場合は、一通りの健康診断的なチェックとなります。
検査の必要性
一見何もないように見えて、しかし、何かの異常が隠れている可能性は十二分にあります。
それを手探りで探すための検査が必要です。
見てわかる、触ってわかる範囲で、大きな異常がない。
具体的な症状が出ているわけでもない。
それでも、検査は絶対に必要だと考えています。
根拠としては、上述の通り「検査した項目においては異常が見つからなかった」というだけであり、「検査していない項目で異常が隠れている」可能性があるのです。
原因が突き止められるまで、徹底的に検査するとまでは言いませんが、一般的な検査である、血液検査やレントゲン検査、エコー検査などの健康診断で実施するレベルの一通りの検査は実施します。
しっかりと検査をしなかったことで見落としてしまうリスクは絶対に避けなければなりません。
なによりも、
『もっとも身近な存在である飼主さんが「おかしい」と言ってる以上、絶対にそこにはなにかがある』のです!!
これは、獣医師の診察を超えた観察眼を飼い主さんは持っているからとなります。
検査の結果
そこそこ前置きが長くなりましたが、、、
結果としては、「検査の範囲においては、異常は見つからなかった」となります。
ひとまずは安心です。
これは、「検査をする必要がなかった」とか、「検査は無駄だった」ということではありません。
「その検査で異常が検出されなかった」という立派な結果が得られたのです。
この事実だけで、検査をした甲斐があります。
無駄な検査は実施しません。
要経過観察のご説明
最後に、検査結果に対して、飼主さんは安心したご様子でした。
筆者も、とりあえずは安心です。
しかし、「飼い主さんの感じた違和感はきっと正しい」というのは、経験上、確信をもっています。
今回はたまたま異常が見つからなかっただけで、なにか隠れた異常があるかもしれないこと、今は症状がないものの、これから何かしらの症状が出てくるかもしれないことをご説明。
しばらくは、要経過観察として、翌日主治医にもご相談するようにお伝えしてお帰りいただきました。
少し不安を煽るような言い方になってしまったかもしれませんが、楽観的に考えて重要なサインを見逃すほうが問題です。
夜間救急は、その時間帯の最後の砦。
見逃すことなく、しっかりと主治医にバトンタッチできるようにしていきたいものです。
夜間にペットの体調が悪くなったら
動物病院の受診をお勧めします
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執筆 K-VET
